翠「じゃあ今日の授業はこのプリントからですぅ。とっとと始めるですぅ。前の人間、さっさと配りやがれこんちくしょーですぅ!!」
生徒A「先生、それこないだの授業でやりましたけど・・・」
翠「え・・・そ、そうだったですか・・・(あっ・・・そうですぅ・・・この間時間が
余ったからやらせたんですぅ・・・)じゃあ・・・じゃあ・・・テキストの69ページを・・・」
生徒B「せんせー、そこ期末の範囲外って言ってたじゃん」
翠「えっ・・・?そ、そんなこと言ったですか・・・?(あぁっ!!・・・確かこの間他のクラスが
追いつきそうにないからって短くしてもらったんですぅ・・・私ったら・・・)」
翠「えっと・・・じゃあ・・・今日はぁ・・・えっとぉ・・・(ま、不味いですぅ。す、することがないですぅ・・・
でも、このままだらだら終わらすのもいけないですし・・・ええと・・・ええとぉ・・・)」
生徒C「せんせー、することないなら塾の宿題やっていいですかー?」
翠「そ、そんな・・・駄目ですぅ・・・学校にいる時は、ちゃんと学校の授業を受けなきゃいけないのですぅ。そんなこともわからないのですかこのチビ人間は」
生徒D「えーでもやることないんでしょ〜?じゃ、いいじゃ〜ん。なぁ、みんな?」
その他生徒「いーんじゃない?あたし数学やばそうだからする〜」「保健はマジでやんないとな〜」
「お前保健しか勉強してねーじゃんww俺もだけどなww」「俺、あんま寝てないから寝るわ・・・おやすみ」
翠「あ、ちょ、ちょっと・・・まちやがれですぅ・・・えっと・・・そう!復習!てめーら!、復習しやがれですぅ!!」
生徒E「家庭科なんて家で先日少しやれば点取れるからいいっすよ〜」
翠「そ・・・そんな・・・お、おめーら、は、話をするな・・・ですぅ静かに・・・しやがれ・・・ですぅ(
蒼や水銀燈先生の授業はみんな聞くのに・・・なんで・・・なんであたしの授業はみんな聞かないですか・・・)」

学校が終わり、夜蒼星石と飲みに・・・

翠「ングっ・・・ングっ・・・」
蒼「ちょっと・・・翠星石、そんなに飲まないほうが・・・」
翠「ングっ・・・ぷあ〜〜!!うるせ〜〜ですぅ!!ど〜せあたしの授業なんか誰も聞いてね〜んですぅ!!
・・・確かに、英語や数学に比べたら、簡単ですけどぉ・・・点数だって取ってくれてますけどぉ・・・
でも・・・でもぉ・・・授業なんか誰も聞いてやがんねーですぅ・・・」
蒼「そんなことないよ。落ち着いて。確かにみんなが聞いてるわけじゃないよ。僕の授業だって寝てる生徒とかいるし。
でも、必要としてくれる生徒がいる限り、頑張らなくちゃ駄目だよ。」
翠「・・・蒼はみんな真面目に聞いてくれるし慕われてるからそんなこと言えるんです・・・
家庭科なんて授業、1日で余裕で覚えられるとかほざきやがるんです!!・・・実際すぐ覚えられますけど・・・
それでも、あたしは・・・みんなと楽しく授業したいんですぅ!なのに・・・みんな、他の科目が
危ないって言って話を聞かないで・・・それでも保健の勉強だけは真面目に受けやがって・・・
〜〜〜〜〜!!!!思い出したらまたムカムカしてきたです!!」
蒼「まぁまぁまぁ。あの人の授業は仕方ないよ・・・あれは・・・w・・・ねぇ、翠星石?
ちょっと飲むのやめてくれる?落ち着いて聞いて。今のこと、生徒には言った?」
翠「ふぇ?い、言えるわけねーです!こんな恥ずかしいこと!!だ、大体あいつらに言ったって ぜってぇ聞くわけねぇです!そうに決まってやがるです!!」
蒼「そう決め付けちゃうのはよくないんじゃないかな?ちゃんと聞いて欲しいんならまず生徒を信頼しなきゃ。 生徒を信頼しない先生を生徒が信頼すると思う?」
翠「う・・そ、そりゃあ・・・し、しないと・・・思うです・・・けど・・・」
蒼「だったら言おうよ。確かに馬鹿にされるかもしれないけど、翠星石がどんな気持ちで毎回授業で望んでいるのか。 どんな授業をしたいのか。それをみんなに伝えなきゃ。
気持ちをわかってもらった上で 翠星石がみんなを弾き付けるような授業をしたらいいんじゃないかな・・・?」
翠「で、でも・・・あいつら・・・ぜってぇ馬鹿にするです・・・決まってるです。」
蒼「最初はそうかもしれない。でも馬鹿にされてそこで諦めるような神経かい翠星石は?そんなんじゃないだろ?」
翠「・・・そうですぅ。最初は駄目でも・・・きっといつか・・・いつかこの私の魅力で あいつらを膝まずかせてやるですぅ!!靴を舐めさせてやるですぅ!!おーほっほっほっほっほっ!!!!」
蒼「それはまた違うんじゃないかなぁ・・・ちょっと、翠星石、うるさいよ。他のお客さんに迷惑だろ。
ちょ・・・す、すいません。すいません。ほら、翠星石、ちょっと黙って・・・あ、すいません!すいません!!」
翠「おーほっほっほっ!!見てろですあいつら!!必ずこのあたしの虜にしてやるですよぉぉぉぉ!!!!」

蒼星石と飲んで決心した次の授業
翠(次の時間はあいつらの授業です・・・しっかり言い聞かせてやるですよ)
階段を上がる足にも力が篭る。やる気は十分にあった・・・しかし・・・
翠(果たしてどーいう風にあいつらに言うですか・・・)
授業までは何日もあったのにいい案が何も思いついてなかったのだ。
翠(う〜・・・蒼星石は伝わればなんでもいいって言うけれど・・・そんな簡単な問題じゃないですぅ・・・)
全く考えていなかったわけではない。むしろ1日中考えていた。それでも思いつかなかったのだ。
翠(あ〜・・・もうあいつらの教室につくです・・・なんとか・・・なんとかしなきゃ・・・)
そうこうしてる内にとうとう教室の前までついてしまった。
翠(はぁ〜・・・結局何も思いつかなかったです・・・も、いいです。当たって砕けやがれですぅ!!
・・・しかしこのクラスは相変わらず騒がしいですねぇ。全く、動物園でもこんな騒がしくないですよ)
扉に手をかけてあけようとしたが、そこで手は止まってしまった。


生徒A「翠星石先生ってさ、教師なのにあんな態度や喋り方で俺ら見下してるのかな?」
生徒B「じゃねえ?自分がこの世で一番とか本気で思ってそうだしな。授業も一人でも寝てたらキレだすし。」
生徒C「そんなとこあるよな。その癖自分の意見通らなきゃ怒り出すし。ガキ以下だよはっきり言って」
翠(な・・・なんでみんなしてそんなこと言うですか・・・そりゃあたしは教師でおめーらは生徒なんですから
立場は上・・・ですけど・・・でも、見下してるなんて・・・一度も・・・)
生徒D「正直聞いてても眠くなる授業やる方が悪いよな〜それを寝るなって言う方が無理あるし」
翠(そ、そんな・・・翠星石は・・・必死にみんなに楽しんでもらえるような授業を・・・)
生徒E「テスト前に範囲まとめたプリントだけだしてくれりゃいいのにな。授業なんかなくたって
俺らが勝手に卒業できるくらいの点は取るし」
翠(う・・・テ、テストの点を取ることよりも・・・授業を・・・)
生徒F「な。あんなの前日やりゃほぼ満点取れるし。やる意味ねーよ」
翠(や、やめるです・・・そ、それ以上、言うなです・・・)
生徒G「てゆーか先生遅くねえ?ま、こないのが一番いいんだけどさ。むしろくるなって」
生徒H「ははっ確かに。その分他の科目に時間回せるからな。」
翠(・・・もう・・・やめて・・・やめてです・・・)
気づいたら扉を握った手は震え、目からは涙が零れていた。
扉を開けようと何度も力を入れるがどうしても開かない。いや、開けられない。
性格上、今までにこういうことが全くないわけでもなかった。
しかし心から信頼している人達にここまで言われたことはなかった。
翠(蒼星石・・・ごめんなさい・・・やっぱり無理ですよ・・・)

自分は精一杯頑張ってきたつもりなのに・・・いつかは伝わると思って必死に頑張ってきたのに・・・
そんな気持ちは今は駄目でもいつか必ず気づいてくれると信じていた翠星石にとってこの言葉たちは
今まで教師をやってきて、いや生きてきた上で最も心に突き刺さっていった。
翠(もう・・・いや・・・私の何が・・・いやですか・・・どこが、嫌いなんですか・・・
私は・・・私は、こんなことを言われる為に教師になったんじゃないのに・・・もう、もう無理・・・)
今にも泣き崩れそうな翠星石だったがそこに思いもかけない言葉が聞こえてきた。
生徒JUM「えーでも俺はあの先生嫌いじゃねーけどなぁ・・・」
「えーなに!?意味わかんねぇんだけど」「お前このクラスで一番ボロクソ言われてるのにどうした?」
「この間なんて課題の裁縫踏まれてたじゃん。」
その言葉は翠星石にとっても意外な人物からであった。
JUM・・・クラスでも優等生だがどこかクラスメイトと壁を作ってる生徒、翠星石自身も何回馬鹿にされたかわからない。
この間の授業に至っては裁縫の課題がうまくできてない男子生徒を馬鹿にしてて止めに入った翠星石と衝突し
思わず彼の課題の裁縫を足で踏んでしまったのである。
翠(あいつはこのクラスでも1番私のことを嫌ってると思ってたのに・・・)
涙を拭きつつそのまま話をこっそり聞いてみる。
JUM「確かに正確悪いしすぐ手だすしかといって水銀燈先生みたいにセクシィでもないけどさぁ」
翠(あ・・・あんのちび人間・・・)
翠星石が思わずドアを蹴破る準備をしたその時
JUM「でも課題踏んだのはわざわざ俺の家まできて謝りにきてくれたぜ。そこであんたも教師のくせして暇だなって
からかったらキレだしたけどww・・・でもあいつ・・・単に自分の言いたいことをうまく伝えられないだけ
なんじゃね?少なくともやる気は他の先生より十分あると思うんだけど」

生徒A「そんなもんかねぇ。俺はそうは思わないけどなー。でもあの先生、からかったら面白いよな。」
生徒J「馬鹿っていうか・・・なんかよくあれで教員になれたよなって感じだよな。」
生徒B「まぁ・・・見てて飽きないよなww」
相変わらず散々言われてるが翠星石は呆然としていた。
私の授業を・・・私のことを嫌いと言ってない生徒がまだいたですか・・・
それだけが頭の中でぐるぐる駆け回っていた。
蒼(生徒を信頼しない先生を生徒が信頼すると思う?)
そうだったです・・・確か・・・蒼星石も・・・
教室内ではまだ悪口が色々言われていたがそんなの言わせておけばいい。
今は好きなだけ言わせておけ。いつか・・・いつか・・・
翠(そう、いつか・・・服従させてやるですよ・・・!)
涙を拭い教室のドアをおもいっきり開く。
一瞬の静寂の後、また騒々しくなる生徒たち。
翠(まずは・・・こいつらに、私の想いを伝えるですね・・・わかってるですよ、蒼星石。)
大きく深呼吸をし、そして「てめええらああ〜〜〜!!!黙りやがれですぅ〜〜〜〜!!!!」
いつもと様子が違う翠星石に思わず驚く生徒たち。
翠「おめーら、黙って聞くです。今日は・・・わ、私が・・・どんな風に・・・いつも、いつも・・・
授業をやってるか・・・おお、教えてやるです・・・い、いいですか・・・」
生徒C「せんせー、そんなことやってる暇ないっすよ〜くるの遅いからもう終わる時間ですよ〜?」
翠「えっ・・・?」

翠星石が思わず振り返って時計を見ると同時にチャイムがなった。
翠「あ・・・あっ・・・」
生徒A「終わった〜今日は先生くるの遅くてなくて良かったわ〜次なんだっけ?」
生徒B「移動教室だよ〜あーとっとと行くべ〜」
続々と教室を出て行く生徒たちを呆然と見送る翠星石。
翠(そ・・・そんな。待って・・・待って・・・です・・・)
そんな言葉が喉まででているのに声にならない。
愕然とする翠星石だったがそんな翠星石に声をかける生徒がいた。
生徒JUM「ほら、これ」
翠「・・・え?」
生徒JUM「こないだの課題。提出今日までだったろ?あんたが余りにくるのおせーから先に集めておいてやったよ。」
翠「あ・・・そ、そりゃ、ご、ごくろーです・・・」
生徒JUM「ん〜。じゃ、俺も行くから。あんたもいつまでもそんなとこ突っ立ってないでさっさと行けよ。」
翠(・・・課題、やってる奴、少ねーです・・・でも・・・ゼロじゃなかったです・・・!)
それは翠星石が生徒たちに腹がたって思わず勢いでだしてしまった課題であった。
やってくる奴なんて全くいないと思ってた。でも・・・いた。
翠(そうです・・・蒼星石も言ってたです・・・今は駄目でも、少しづつ、少しづつ進んで行けばいいって・・・)
忘れかけていたことを再び思い出した。JUMのおかげで。
翠(と、とりあえず、この課題の出来具合を見るです・・・そ、それから今後の授業の進み方をやって・・・
あーくそ、あのちび人間共のおかげでえらい仕事が増えたです・・・!!どうしてくれるですか・・・!!)
そんなことをぶつぶつ呟きながら教室をでる翠星石だったがその顔は綻んでいた。

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