「・・・・・・」

放課後の、とある教室。
そこに数名の生徒が神妙な面持ちで集まっていた。

日も暮れかけ、オレンジの光が室内を照らす中・・・・
中心に座り、何かの本を二冊、交互に見て頷いている一人の・・・・ガリ勉タイプの生徒。

ガリ勉「OK。完璧だ」

がり勉は一言そう言って、本を二冊重ねて目の前の机に置く。

A「っし!!!」
B「あとはコピーするだけやっ!」
C「チェックありがとよ、恩に着るぜ!」

各々喜びのポーズをとり、ガリ勉にお礼を言い。
来た時から空けていた出口へそれぞれ走って出て行こうとする生徒達。

真紅「そんなに喜び勇んでどこへ行くのかしらね?」

三人揃って教室を飛び出し。
不意に背後から聞こえる声に石のように固まる。
教室の中でもガリ勉がかたまっていた。

B「・・・・し、真紅、先生?」
紅「面白そうな物を持っているわね?」
C「あ、いや、これはっ・・・」

紅「 見 せ な さ い ? 」

ニッコリと微笑み、しかし言葉に、迫力と強制力を持たせて。
手を出す真紅。

A(おい、ど、どーするよ?)
C(よりにもよって一番ばれたらアウトっぽい先生に・・・)
B(いや、しかし隠しとおすのはもう無理・・・)
生(・・・・・・・・)
C(・・・・・・仕方ない。見せるしかないか・・・)

しぶしぶ、小さなその手にブツを渡す生徒。

B(あーあ、これで「試験必勝!高確率で出る問題集」で一攫千金も夢と消えたか・・・)

そんな目の前の生徒の落胆振りをよそにぱらぱらとページを捲り、内容を確認する真紅。
数分の後、本を閉じて

紅「中々、面白そうな事をやっているわね?」

と述べ、生徒達に返すように本を差し出す。

生「・・・・・・・へっ?」

思わぬ展開に素っ頓狂な声を上げてしまう、三人。
無理もない。普段の性格からして真面目が過ぎるほどと言われる真紅が。
『あの』真紅が学業を修めるものにおよそ相応しくないであろう商売事をOKしたのだ。
混乱する、生徒達。

紅「今日は機嫌が良くてね・・・・
  このぐらいの事なら、目を瞑ってあげられるわ。」

A「そ、そりゃまたどうして・・・・?」

き、とAを見据える真紅。
ビク、と身を強張らせるが、直後に目の前の真面目さんが浮かべた愉悦の表情にますます混乱するA。

紅「ふふ・・・・・なんと今日の朝!
  インターネットオークションで・・・・・・

  劇場版くんくん〜煌めきの鍾乳洞〜プレミア試写会のチケットが落とせたのよ・・・・・!!」

目を輝かせてその時の情景を思い出すかのような眼差しであさっての方向を見る真紅。
開いた口が塞がらない生徒達。
教室の中で聞いていたガリ勉も同じように口をあんぐり開けていた。

紅「・・・コホン。そういうわけで」

我に返り咳払いをし、話を戻す。

紅「私の気が変わらないうちに、計画を進めたほうがいいと思うけど?」

しかし表情と口調に喜びがかすかに感じられて。
それはどこかおどけているようにも見えて。

生「は・・・・はい!ありがとうございます!」

機を見出したように礼を言い、駆け出す三人。
下の階から聞こえてくる歓喜の叫びにくす、と笑う真紅。

紅「さて、と。
  私も今日のデスクワークを終わらせるとしましょう・・・・」

そう呟き、教室から離れていく。
ガリ勉もそれを見計らい、こそこそと自分の生活へ戻っていった・・・



予想以上の反響にABCの三人、それにガリ勉が卒業するまでの間奮闘する事になるのは、また別のお話。

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